濃紺の太平洋が薄紅に色づく夜明け。
かすかに射しこむ朝の輝きを受け、今日もまた美酒への挑戦が始まります。
水・米・技・人へのこだわりと酒にかける情熱が、日本國土佐に銘酒「土佐鶴」を育みました。
     土佐鶴は室戸岬を遠望できる高知県東部の安芸郡安田町にあり、酒造蔵のすぐ側を鮎おどる清流・安田川が流れています。安田川の上流には日本三大美林の一つ魚梁瀬(やなせ・剣山系)が広がり、豊かな森林と豊富な夏季雨量が「酒造りの生命」ともいえる良質で豊富な水を恵んでくれます。酒造井戸から汲みあげる仕込水は、最も美味しいといわれる軽度の硬水に属し、バランスよく含まれたミネラルが酵母に健全で強い発酵をうながします。
清流・安田川
     原料米は、淡麗な酒を醸す高知県産米から吟醸に最適な酒造好適米「兵庫山田錦」まで目的に応じて幅広く使用し、自社の精米工場で特に厳選して精米します。吟醸酒では酒税法に定められた表示基準より更に厳しい精米歩合を採用し、大吟醸では極限といわれる精米歩合30%まで磨きます。
精米歩合30%の兵庫山田錦
     酒質を特徴づける酵母も柔軟に使い分けています。醸造協会酵母だけでなく、吟醸熊本酵母や独自に育種した土佐鶴淡麗酵母まで、豊富なコレクションの中から米や目的の酒質に応じて最適な酵母を選択します。
酵母の発酵
     酒造りの長たる総杜氏長は、名醸地広島(木谷杜氏)出身の池田健司です。酒造への探求心は年とともに深まり、妥協のない厳しい指導で蔵人を束ねて次々と美酒を醸します。
  土佐鶴は、品質追求の一環として出品する全国新酒鑑評会(共催/独立行政法人酒類総合研究所、日本酒造組合中央会)において、平成29年度で全国最多となる通算44回目の金賞を受賞しました(受賞回数は醸界タイムス社などのデータをもとに昭和40年以降の金賞受賞回数を通算したものです)。燦然と輝く「金賞」のきらめきは、高度な醸造技術の証として土佐鶴商品の一本一本に息づいています。
池田総杜氏長
     土佐鶴の創業は古く、江戸時代の安永年間に遡ります。戦国時代、土佐ノ國・安田郷(領主:安田三河守)家老であった廣松家は、江戸時代に入ると、和船十数隻をもって太平洋の荒波をくぐり、遠くは江戸の地にまで木材を搬出するなど海運業を営み、併せて、安永二年(1773)には、自田に産する米で酒造りを始めました。以後、代を重ねる度に酒造への自信を深め、弘化二年(1845)ついに酒造専業へと踏み切り、名醸への軌跡をしっかりと刻みはじめました。以来、時代の激流に揉まれ、数々の苦難を経ながらも、「品質第一・誇れる品質の酒を造れ」という社是は脈々と受け継がれ、現蔵元に至って「淡麗にして旨い辛口」という土佐鶴本来の品質が完成の色を更に深めています。
土佐鶴本社蔵
     今を去る千有余年の昔、土佐国司の任を終えた紀貫之は帰洛の途上、蒼海と松原に舞う鶴の一群を眺め、土佐への慕情たっぷりに一篇の歌を詠みました。
  「見渡せば 松のうれごと 棲む鶴は 千代のどちとぞ おもふべらなる」
     土佐鶴の酒銘はこの歌の吉兆鶴にちなみます。悠久の昔から続く雄大な土佐の自然。酒と夢をこよなく愛する土佐の人々。日本國土佐の風土は千年の時を超え、今もしっかりと息づいています。土佐鶴は一献の酒に平安のロマンをたたえ、時代を超えて「人の心」を打ち続けたいと願っています。
 

土佐鶴北大野・千寿蔵・天平蔵